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Pisnowar

札幌でアクセサリーの製作・販売(委託販売)を行っています。
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※コメント欄に追記あり(合わせてお楽しみ下さい)


母と姉に見送られ札幌行きのバスに乗り込む。

さすが正月、富良野から来たそのバスは混み混みだった。
空いてる席は見当たらない。

相席するなら同性の方がいいが、
めぼしい席の彼は眠っていたので、立ち止まっていたすぐ横の席に着くことにした。

「隣空いてますか?」
一応声をかけておく。

眼鏡をかけた20代のちょっとしたロリータは
「あ、はい」と応えて、
より窓際へと身も荷物も縮こませていた。

「そんなによけなくて大丈夫ですよ」
ぼくは大きな手提げバッグとリュックを足元に収めながら言った。

が、
もしかしたら、ぼくと一ミリでも離れたいと思っての行動だったとしたら、
今の発言はキモさに拍車をかけたな、

などと考える。

ペーズリー柄の中綿ヤッケのせいで、いつもより少しふくよかなぼくは、

モゾモゾと最小限の動きでポケットからスマホを取り出す。


視界の端で隣のお嬢さんが少しこちらを見ている。

あとひとモゾで終わるから待てぃ。


これじゃ上着を脱げそうにない。


気休め程度に首元のチャックを少しだけ下ろした。


しまった!


シートベルトをしていない。


ここでまたモゾモゾしたら
キモさ倍増だ。


次の停留所で人が乗り込んできた喧騒に紛れてシートベルトをする案を採用しよう。


10分もしないで次の停留所に着く。
今がチャンス。
膝の上のリュックを少しズラして
手を後ろに回す。

肩も肘もこれでもかってくらい最小限のモゾモゾでお尻の後ろのシートベルトを手前に回す。


視界の端で隣の顔が少し傾くのを認識した。
ヤバイ。
いや、違う、ぼくはただシートベルトを閉めたいだけだ。


カチャッ

その見事なまでの無駄の無いモゾモゾでシートベルトは無事に閉められた。

よくやった、自分。

お腹の上に伏せておいたスマホで母に一報を入れる。
充電が少ないのと、
おそらく画面が隣から丸見えになることを察して、
またお腹の上に伏せておくことにした。

次のミッション。


カバンから雑誌を救出せよ。


またも肩、肘は体にピッタリとつけ、
肘から先、手首、自由な左腕を駆使してリュックから雑誌を取り出す。


視界の端で隣の顔が傾くのを認識した。


もうこれがファイナルモゾだから我慢せぃ。


読みかけのページに挟んでおいたしおり代わりのタコ糸をひょろっとお腹の上に乗せ、
ぼくは文字に集中することにした。


ページをひらりとめくった時、
隣の眼鏡が声をかけてきた。


「すいません、これ開けてもらえますか?」


差し出されたのはペットボトルのお茶。


「あ、はいはい、いいですよ」


軽快に答えながら、
ページの隙間にタコ糸をひょろりと挟み雑誌を閉じる。


ぼくのシナプスは一気に繋がり始めた。


眼鏡、ロリータ、ペットボトル開けらない、ここにメンヘラあり。


そして、緩い。
蓋が緩い。
これならあともう少し頑張れば開けられたんじゃね?
あ、頑張れは禁句?
っていうか、これならファイト一発で親指だけで
クルクルクルーー
スパーーーーン
で開けられたな〜

なんて事を一瞬のうちに頭に巡らせながらも、

「はいっ」とケイン・コスギさながらの爽やかさで蓋の緩まったペットボトルを手渡した。

「あっありがとうございます。」

受け取るその手が少し荒れてるのを見て、

もしかしたら手荒れが痛くて開けられないか、
もしくはアトピーか、


訳は知らぬが、ちょっとしたことができない不便さを感じる時もあるよね、
と、ほんの少しだけ反省した。


雑誌の続きを読む。


数ページ読んだ頃だったろうか。


ぼくは文字を読むのが遅いので、
時間にして20分以上は経っていたと思う。


途中何度か停留所に止まっては、
後ろから順に補助席が埋まっていくほどバスは混んでいた。


雪は少し強まり、外はうっすらと暗くなり始めていた。


ガタガタンッ


バスは少し揺れた。


ちなみに芦別名物はガタタン。


野菜や海鮮などをあっさりめの塩味のとろみあるスープで煮込んだものだ。


それを米や麺にかけて食べるらしいが、我が家では一度も食卓に出たことがない。




第一ステージ

バスの揺れと同時にメンヘラがもたれかかってきた。


そういえば、さっきから船を漕いでいた。


でも、バス内睡眠、隣の人に持たれかかることはよくあることだ。


ぼくは気づかないふりをして雑誌の続きを読んでいた。


隣の重みが和らいだり、増したり、何度か繰り返された。



高速道路の停留所からまた人が乗り込んできて、
ついには前から3番目の席のぼくの隣の補助席まで埋まって、


ついには見事バス収容100%になった。


停車の揺れで目が覚めたのか、
隣の眼鏡ちゃんは小さく声を出し、
体を元の位置に戻した。


が、バスが発車してすぐ、
また隣のメンヘラはぼくに体重をかけてきた。


こりゃ爆睡だな。



辺りはすっかり暗くなり、
路面状況もわりと良いのか、
心地の良い揺れのままバスは進んでいく。



第二ステージ

ついに肩に頭を乗せてきた。


ぼくの上着はシャカシャカしてるので、きっと収まりが悪いんだろう。


ぼくの肩の上で頭が、
前に行ったり後ろにいったり。


そしてようやくみつけたようであるベストポイント。

耳元で鳴るシャカシャカ音は収まった。


人様の中綿ヤッケにもたりかかり、人様の肩を枕にして眠るとは
何と幸せなやつめ。


ぼくの姿勢は右側から重圧でやや左に傾き、隣の補助席のお姉さんにプレッシャーをかけていた。


隣の幸せ者はちょっと吐息を出したくらいにして、
スヤスヤと眠っているようだ。


第三ステージ


わからない、
どうゆう状況なのか、
どんな夢を見ているのか、


ぼくは隣の眠り姫に腕をギュっと握られている。


ぞわぞわする。


全然雑誌の中身が入ってこない。
頭の中と雑誌の文字を行ったり来たりしてるせいだ。


もう、これ完全にコイツ寝ぼけてやがる。
熟睡安眠夢の中。


いや、気づかない、
ぼくは何も気付いていない、
知らないよ、
体をもたれかけられ腕を捕まれてるなんて知らない。


ぼくは平然を装って雑誌に集中することにした。


ちょっと変なところにシートベルトがあって腕が動かしづらいと思っておけば、
たいした気にならなくなった。


途中何度かモゾッとしてみたが、
全くの無反応。


あれ、もしかして意識なくなった?
ってくらい無反応の隣のマグロ。


そしてページをめくろうとして気が付く。

あれっ、右腕掴まれてたらページめくれないやんけ。


これじゃピグモン以下やんけ。


いやでも、待てよ、
何故ぼくが隣のマグロを気遣って起こさないようにしなきゃならんのだ。


むしろ気付け、人を快適な寝具にするな、起きろ。


ぼくは精一杯何食わぬ顔で無理矢理腕を動かしページをめく・・・



スリ〜


少し頭が動いている。


ぼくの肩の上をスムーズに、
ヤッケの滑りを利用して、
少しずつ頭が動いているのがわかる。


ぼくは真っ直ぐ雑誌を見つめているが、
意識はビンビンに右側を見てる。


でも視野の限界、
目玉も首も動かせない。


でもたぶん、

何かだんだんこっちに顔を近づけてきてるような気がする。


いや気のせい気のせい木の妖精。


でもーーー


なんかーーー


体温か、吐息がーーーー


顔に近づいてきてるように感じるーーーーーー


「あっ、」


小さく声を出し、隣の夢見る少女は体を離した。


魔法が切れたのかい?
ぼくのほほ毛が気になったのかい?


っていうか、まじお前なんの魔法にかかってるの?


隣の補助席のお姉さんは
たぶん僕たちが恋人だと思っただろう。


違うぞ、助けて。



ぼくは変な汗をかき、体温と鼓動が上昇していた。


違うぞ、お前にときめいた訳ではない。
この心臓の音は混乱だ、恐怖だ。


もう色んな考えが頭を巡って雑誌どころではなくなってきた。


もう寝たフリしながら寝よう。


ページと目を閉じた。


膝の上で雑誌の端を手で押さえるようにして、落ちないように固定する。

なんて行儀の良い眠り方だ。
見習えよ。


まだ少し胸がドキドキする。
あの時ほんとに顔が近付いていたのか、気のせいだったのか。


っていうか、ほんとに寝てるのか。意識してやってるとしたら
すごい行動力だよ。
メンヘラじゃないの?
君なんなの?


全然眠れそうにない。


それなのに。


隣のスキンシッパーはごくごく自然に、体を傾け、肩に頭を乗せてきた。


さっきよりも深く頭が乗っているような気がする。


髪の毛が頬に当たってくすぐったい。


でもぼくはもう眠っている。
君が持たれかかっているなんて知らないよ。


モゾモゾ


モゾモゾ


気づけよ。


全く動じない。

でも今度は腕は掴まれてないから大丈夫。


第四ステージ


モゾモゾ作戦に失敗したぼくは
お行儀の良い姿勢のまま眠っている。


ぼくは目は閉じている。
呼吸も穏やかだ。



ソッ



はい?????




手を


































えっえっえっ

なに?なしたの?
どうしたらいいの?


えっなんで寄り添うカップルみたくなってんの?


こいつ、絶対寝てない!


わずかに開いたぼくの親指と人差し指の間に指をすり込ませてくる。


また鼓動が高くなってる。
落ち着け、落ち着け、
深呼吸、鼻で深呼吸。


深い眠りについているんだ、ぼくは。


心臓バクバクさせて鼻息フゥンフゥーンしてるのは興奮じゃない。



動揺だよ、驚きだよ、恐怖だよ、


異性に手を触れられてこんな気持ちになるのは始めてだよ。


補助席のお姉さん異変に気付いてよ、カップルじゃないよ。


隣の恋人はぼくとの触れ合いを増すためにキュッと指の力を強めた。


より握りやすいように少しずつ指の位置を変えていく。



ぼくは薄目を開ける。



現実だ



ガタンッ



バスが揺れた!

チャーンス!


はいっ!今の揺れでぼくは
目覚めましたー!


声にならない寝ぼけた声を出し、
ぼくは手と体を動かした。


「ぁっすみませんっ」


隣の握り寿司は手を離し、体勢を戻した。


すみませんじゃねぇよ、
シャリじゃねぇよ、
お客さんっ今日は生きの良いマグロが入ってるよっじゃねぇよ


動いてるからそのマグロ
全然死んでない。


でもぼくは眠っていて何も気が付いていませんよーってお札を全身に貼り、


手をやや中央に寄せて、
もうひと眠りすることに。


体は微妙にモゾモゾさせて、
呼吸はふかーく、ふかーく。


そんな事をしてたら眠れた。
ほんとに眠れた。
ちょっと口を半開きにしちゃったくらいにして。


でも、また僕らは身を寄せ合い
手を握られてた。


一瞬で目覚めた。


というより青ざめた。


もう心臓はバクバクしない。
体は硬直に近い。


薄目も忘れて自分の手を凝視してた。


いや、でも、
もーしーかーしーたーらー

ほんとに眠っていて、
彼氏と別れたとか、
父親が死んだとか、
なんか寂しいことがあって、
眠りながらにして手を握ってしまったのかもしれない。


そこにさらに傷を付けるようなことはしない方がいいだろう。


何て言えばいい?
何をすればいい?


ダメだ、やっぱり動揺してる。
冷静に頭が働かない。


アメもムチもダメ!
それがメンヘラ!



やっぱり気付かないフリしよう。


寝起きでピクッってなっちゃいました〜作戦を実行することに。


もう一度目閉じる。

スヤ〜スヤ〜

ぼくは眠ってますよ〜


ピクッピクピクッ


ぼくは、意識を失っていた主人公がエンディング近くで目を覚ますように、指先を動かした。


隣の魔女が手を離した。

魔法が解かれたぞ!


ぼくは少し伸びをして、
大きくあくびをする。

外の様子やスマホを確認して、

今まで眠っていたので
何も気づきませんでした〜
の空気を目一杯出した。


ちょうど、バスも高速を下り、
札幌市内に入った。


ここからはね、
さすがに誰も眠りませんよ。

ん?わかる?
ここからは誰も眠りませんよ?


チラ見してみたら
窓の外眺めてやがる。


補助席のお姉さんはどう思っただろう。
手の位置なら見えてたはずだ。


第五ステージ



バスはどんどん中心部に向かう。


人もチラホラ降り始める。


サッポロファクトリー前を過ぎたところで、
ぼくはスマホをしまい、
シートベルトを外した。


上着のポケットからカードケースを出し、切符と整理券を出しておく。


トントン


そっと腕を叩かれる。


隣のメンヘラメガネマグロの眠れる森の魔女みたいな恋人の寿司職人は、
スマホの画面をこちらに向けてきた。


メモ帳には

「どちらでおりられるんですか?」

漢字を使え!

お前が文字ならこちらは声だ!


「次です」

そろそろ止まりそうな停留所を指さして言った。


補助席のお姉さんが一瞬こちらを向いたが気にしない。


その後もう一度スマホの画面をポチポチしていたが、
パタと手は止まった。


そして、バスも止まった。


ぼくはリュックを背負わず、
二つの大きな荷物を両手に持って席を立つ、
すぐ後ろから人が迫ってきていたので、

あらゆる座席に荷物を引っ掛けながらバスを降りた。


リュックを背負って歩き出す。


振り返らない、絶対に。


赤信号に引っかかった。


手提げのバッグを地面に下ろし、
小休止。


辺りを見渡すフリをして、
そっと後ろを振り向いてみた・・・























誰もいなかった。

セーフ!!!!

あぶねー!!!!

怖かったー!!!!


その後も地下鉄を乗る時、
家に入る時、キョロキョロと後ろを振り返りながら
何とか部屋の灯りをつけ、
やっとひと息つけたのである。



そして、実家から貰ってきた餅を食いながらTwitterで
「バス」「バス 札幌」「バス ペットボトル」を検索してみた。

何もヒットしなかった。




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2016.01.04.Mon 23:05 | 何て事のない話 | trackback(0) | comment(1)
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Pisnowar
札幌でアクセサリーの制作・委託販売を行っております。

廃材や骨董品、アンティークパーツ、使われなくなったものに、新たに価値を与えることで『もの』を大事にする気持ちを持ってもらえれば良いなと思います。

2005年から活動中です。

Pisnowarのアクセサリーはほとんどが1点物なります。

詳細が気になる方はお気軽にメールして下さい!

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