FC2Blog | RSS1.0 | ログイン | 投稿 

Pisnowar

札幌でアクセサリーの製作・販売(委託販売)を行っています。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | trackback(-) | comment(-)
14日目 8月15日


6:00 看護師がカーテンを開ける音で目が覚める。
おはようございますと一言挨拶をしてスマホの画面を見る。


少しゴロゴロして脳みそを起こす。


メールの返信やSNSをチラ見して本を読む。


朝食。
ハンペンが出た。
ハンペンはあの口当たり、味ともにあまり好きではない。


何より、ハンペンが米のおかずになるとでも思うのか?
なぁハンペンさんよ、どうなんだい?


鋭く尖った箸で思いっきり真っ二つにしてやった。


ピクピクともがき苦しむハンペン野郎を殺意に満ちた目でひと突き。


そのまま大きく開けた口の中に放り込んでやった。



むっしゃむっしゃむっしゃむっしゃむっしゃっ


この変なスポンジみたいな気泡のひとつひとつから味が染み出し、
滑らかなのか、しゅわしゅわなのがわからない、この忌々しい食感を生み出す。


食べ物じゃないものを食べてる気分になるのだ。


ご飯をひと口食べる。



お醤油ベースの薄めの味付けのツユにひたひたになったハンペン野郎の片割れにトドメのひと刺し。


むっしゃむっしゃむっしゃむっしゃむっしゃ


せっかくの和風の、しかも薄口の、ぼくの好きそうな味付けなのに、このへんてこりんなスポンジフィルターを通したことで、
妙なハンペンテイストの味になる。


なんなんだこいつは。


ご飯を食べる。



ハンペンのもう一人の影に薄汚れた緑色の何かがある。
これは、ピーマンか?


ツユから逃げ切れずに器の隅で負の遺産の如く盛られたカーキ色の・・・
これは、ピーマンか?


生き残っているハンペン太郎を端に追いやり、そのカーキ色の物体に箸を伸ばす。


しなしなの食感と、お醤油ベースの薄い味、そして、わずかに、
忘れかけていたころにほんのわずかの苦味が顔を出す。



これは、ピーマンか?



答えが知りたくて、さらにもうひと口。


これが、ピーマンだというのか。


ピーマンと言えば、
その類い稀なる青々とした苦味と、
中身を食べるという概念を覆し、
皮なのか果肉なのかわからない、その部分に含まれた水分バランス、
噛んだ時に少しだけ抵抗する艶やかな表皮とシャキ感。



これこそがピーマンの、ピーマンの生き生きとした姿ではないのか。


それに比べてどうだ。
君はどうだ、どうしたんだ。



どーしてそんなにぐったりしてるんだぁーーーー!!!!



そうか、



これも、



このハンペン太郎の仕業かぁーーー!!!!



ピーマンの仇!



どぅりゃあー!



箸でがっしりと急所を掴み、
身動きの取れない状態にして、
そのまま我が牙で真っ二つじゃあーーーーー!!!!!



むっしゃむっしゃむっしゃむっしゃ


ご飯を食べる。



目の端にぐったりとしたピーマンが見える。
仇を取ろうとしたぼくを見てわずかに微笑んでいるようにも見える。



ちくしょー、
ちくしょー、



ピーマンを、
こんなことにしやがってー!



溢れる涙をも際限なく吸い込むハンペン太郎の片割れ野郎を震える手で口の中目掛けてぶん投げる。



ご飯を食べる。



泣くのは玉ねぎの前だけにしてくれや・・・



か弱く親指を立てて、目を閉じるピーマン。



味噌汁をひと口飲み、残ったピーマンを食べる。



今日はちょっと早めにコーヒータイム。
公園で雨上がりの芝生にスリッパを濡らしながら一服。



風が吹くと頭上の葉っぱから小雨が降る。



まつ毛に付いた小さな水滴をそのまま景色にして、急ぎめの二服目。
コーヒーを飲み干し部屋に戻る。



急いだ理由は予約制のシャワーの時間。
ちょうど良い時間が埋まってたので、朝一に入ってしまおうと思ったのだ。


これでここのシャワーに入るのも最後かと思うと、少しも寂しくなかった。


ベッドに腰掛けてタオルで頭を拭く。
ペットボトルの水をひと口、ふた口。


この水いつ買ったやつだっけ?
3日は経ってる気がする。



今日中に飲み干す決意をする。


お昼までは相当時間がある。
よし、何か作るか。
革の残りは少ない。


裁ちばさみ入れ。
学生の時にデニムの前掛けで作ったものをずっと使っていた。


よし、と思い立ち、それを作る事にする。


残りの革をハギ合わせる。
特に型紙を作るわけでもなく、
ハサミを置いてはペンで印を付ける。


下穴を開けて切り替え部分を×××と縫っていく。


昼食。
デザートはキウイだ。
いつまでも口に残る酸味。


外は雨、歯磨きを済ませて次の切り替え部分をやっぱり×××と縫っていく。


雨が上がったのを見計らって一服しに行く。


先ほどまで降っていた雨でアスファルトは濡れていた。
水溜りを避けながら歩いていたが、
駐車場を抜けるまでにスリッパは完敗していた。


足裏の不快感からどうにも落ち着かない。
急ぎめに煙草を吸い終え病院内に入る。


いつもより少し重たいスリッパは鈍い音を廊下に響かせる。


今日は土曜日、病院内も静まり返っている。


部屋に戻ってペーパータオルにスリッパの水分を染み込ませる。
何度かやってみたが、次にトイレに立つまでにどうにかなりそうな気配はない。


ドライヤーを借りて乾かしてみる。


さすが、温風。
履いても、しっとり湿っぽいな〜程度までは乾いた。
底面はまだ水分を含んでいるように見受けられる。


気分を切り替えてハサミ入れの続きをする。
3枚重ねた革の穴がぴったり合うかがこれからの明暗を分ける。


まずまずの出来だ。
片側を縫ってみて実感する。


雨も降ってないので、ここで一息いれることに。


ローソンでコーヒーを買って、
公園に行く。
足元はスニーカーだ。


空は曇ってないが、パラッパラッと雫を感じるようになってきた。


また頭上の葉から落ちてきているのだろうと思っていたが、
どうやらそうではないようだ。


視覚でも雨の線が確認できたので足早に戻る。


ハサミの最後の一直線。
浮きを作りながら、ストレスの溜まった革を三枚重ねで縫っていく。


少し縫い進めて、
間にある革の穴がズレていることに気が付く。


何とか針をクネクネさせて縫っていく。
最後のひと穴が余った。
ズレたようだ。


つじつま合わせでひと穴増やして、完全!


何という満足感だろう。


荷物の整理をする。
まだ全てを詰め込んでないのに、
既に激重の予感のリュック。


どうしてリュックというのはこんなに重くなるのだろうか。


本を読む。


夕食。
さつまいもが喉に詰まる。


スニーカーを履いて一服しに行く。
夕方の特等席、渡り廊下の下の土台は雨に濡れて座れそうもない。


壁に寄り掛かって煙草に火を付ける。
しゃがみ込んでみるが、あまり落ち着く態勢ではないし、
何よりみっともないと思い、
立ち上がる。


みっともない?
今さら?


笑顔の素敵な看護師が自転車で現れる。
今日はお疲れ様でしたと告げる事ができた。


明日は来るのか、今のが最後か。



煙草を吸い終わって夕焼け空を眺めていると、
建物の角からひょっこり車椅子の男声が現れた。


こんばんはと挨拶をする。


「もう入院長いんですか?」と聞いてくる。


早い、話しかけてくるのが早い。


「いや〜二週間くらいです、
もう明日退院ですよ」と答える。


その後も、
何階?とか
可愛いコいる?とか
いくつ?とか
どうして入院したの?とか
仕事は?とか

とにかく色々聞かれたので、
ぼくのターンが終わった所で、
やはり相手の事も聞かねばも思い聞いてみる。


遊園地のアトラクションを動かすスイッチがひとつだとしたら、
たぶんぼくはそのスイッチを押したことになる。


彼は話上手で、かつ、わりと早口めの口調で次々と色々な事を語る。


自分の入院のこと、病気のこと、仕事のこと。


ぼくらはもう一本煙草に火をつけ話をする。


悲観的でもなく、諦めてるわけでもなく、ごく普通に、普通に、たまに笑ったりもしながら自分の話をしている。


ぼくも彼の置かれた立場がかわいそうだなとか、辛いだろうなとか、そんな同情はなく話をする。


考えたってわからないのである。
どんなに彼を知ろうとも、
詳しく話を聞こうとも、
彼の気持ちはわかるわけがない。


ぼくがガムを食べ始めたのを見て、戻ろうか、と彼は言った。


エレベーターに乗ると、

「4階のデイルームはめっちゃ広いよ」

「へぇそうなんですね!」

「あ、見る?」

「じゃ、そうしよ!」

そう言ってまるで彼の家に行くようなノリで、
2階で開いたドアをそのまま閉めた。


4階に着くとデイルームは確かに広かった!


もう何度もブログで「デイルーム」を出しているが、

何なのかと言うと
大きなテレビがあったり、
お茶や水の機械があったり、
雑誌や新聞なんかもある共同スペースの事である。


デイルームのテーブルには彼女らしき女性がスマホをいじって待っていた。


彼は「今友達になった笑」とぼくを紹介する。


それから始めてお互いが名を名乗り、三人の会話が始まる。


彼も明日退院らしく、帰りに円山でランチをするらしく、
2人でどこに行くかの議論が始まったのが、


もうここへ来て30分くらい経った頃だった。


ひとしきり会話が収まったところを見計らって、
「じゃ、そろそろ戻りまーす」と言って別れを告げた。


「お大事に」の言葉も添えて。


エレベーターで2階に降りながら、あまりにもドライだったかな〜なんて思ってもみたが、
実はたいして気にしていない。



部屋に戻って日記を書く。
残りの荷造りは明日の朝だ。


スマホをしばらくいじって寝る。


途中、向かいのおじさんの「眠剤くださ〜い」コールと
隣のおじさんの「痛み止めくださ〜い」コールで

なかなか深い眠りにつけない。


朝方だったろうか、
隣からか細い声で
「おかぁさん・・・
いたぁい・・・
かえりたぁい・・・」


と聞こえてきた。
寝言か、いつものように独り言か。



そうか、隣のおじさんは帰りたかったのか。














まだまだー!!!!



↓裁ちばさみ入れの図







20150815210206d5d.jpg

20150815210206d5e.jpg
スポンサーサイト
<< 2017.04 >>
S M T W T F S
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
ENTRIES
CATEGORY
ARCHIVES
COMMENTS
TRACKBACKS
LINKS
PROFILE

Pisnowar
札幌でアクセサリーの制作・委託販売を行っております。

廃材や骨董品、アンティークパーツ、使われなくなったものに、新たに価値を与えることで『もの』を大事にする気持ちを持ってもらえれば良いなと思います。

2005年から活動中です。

Pisnowarのアクセサリーはほとんどが1点物なります。

詳細が気になる方はお気軽にメールして下さい!

HP http://pisnowar.web.fc2.com/

Twitter @Pisnokun
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。